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東京地方裁判所 昭和46年(ワ)1508号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕<証拠>によれば、原告は本件事故のためいわゆる鞭打損傷の傷害を受け、事故当日から昭和四三年一〇月七日まで石川病院に一七〇回、同月八日から昭和四五年五月七日まで東京労災病院に一〇六回それぞれ通院して治療を受け、同年九月に右病院において、局部に頑固な神経症状を残し、これは自賠法施行令別表障害等級一二級に該当するとの診断を受けたこと、原告は新京王タクシー株式会社に勤務するタクシー運転手であるが、右の間昭和四四年九月二〇日までは完全に休業したことがいずれも認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

しかし一方、前出<証拠>によれば、原告は右のとおり二年半余にわたる長期の通院治療を継続したのであるが、石川病院においては当初の時期を除いて投薬、注射等いわゆる対症治療とマッサージを主とし、また東京労災病院ではほとんど星状神経節遮断術の繰返しに終始していること、石川病院でこれ以上の治療はできないといわれて東京労災病院に転医したものの、その後も症状は特段の改善をみないまま前記後遺症の認定に至つたこと、右治療期間ないし休業期間中の治療関係費用および休業損害の大半は、被告会社の弁済、自賠責保険および労災保険により填補を受け、さらに前記後遺症認定に基づき労災保険による障害保障金二八万円の給付を受けたこと、原告から被告会社に対する賠償の請求は事故翌年の春過ぎ頃から右後遺症認定の頃まで二年余にわたり途断えていたが、これはその間原告が労災保険による十分な填補を受けていたことと治療が済まないうちに示談をしない方がよいといわれていたためであること、原告が前認定の期間勤務を全休したのは、必ずしもその間を通じて原告の身体状況が全面的に勤務に耐ええなかつたというわけではなく、会社の都合や労災保険給付の取扱い上の都合も与つていることおよび原告は昭和四四年九月二一日から勤務を再開したが、たまに首の痛みがあるものの、その仕事量(走行粁数)においては事故前とほとんど差異なく稼働しえていることが、いずれも認められる。

以上の認定に基づき原告主張の費目毎に損害額を判断する。

(1) (1)逸失利益

前認定のとおり、原告は本件事故により前示一二級相当の局部の頑固な神経症状の後遺症を残したのであるが、一方昭和四四年九月二一日勤務再開後はその仕事量はほとんど減少していないというのである。してみれば右後遺症は原告の仕事上、それに伴なう苦痛を増大させた程度にとどまり、その稼働能力には具体的な影響を及ぼさなかつたものといわざるをえないから、原告主張の後遺症に基づく逸失利益の主張は理由がない。

(2) 慰藉料

前認定の原告の受傷および後遺症の程度、治療の経過(前認定のとおり形式的には原告は事故後二年半余の通院治療を受けた結果、事故後三年を経て後遺症の診断を受けたことになるのであるが、前認定の治療等の経過および鞭打症に伴なう神経症状の特質に照らして実質的にこれをみれば、慰藉料額算定に際しては、石川病院におけるほぼ一年程度の治療を受けた時点において既に前示一二級程度の後遺症が一応固定し、その後の治療はこれによる症状に対応してなされた場合と同じ程度に考えて差支えない。)、本件事故に基づく財産的損害の填補状況(前示のとおり本訴訟において後遺症による逸失利益が認定されないのにかかわらず、原告が労災保険による障害補償給付を受けていることと慰藉料との関係について付言するに、右障害補償給付は後遺障害に基づく財産的損害に対応する給付であつて、精神的苦痛に対する給付の趣旨を含むものではなく、またその給付額は後遺障害の程度に従い法定されていて、被害者に具体的に生じた損害の有無および数額にかかわわらず給付されるものであるから、被害者が加害者に対して有する慰藉料請求権ないし損害賠償請求権の全体から控除されるべき性質のものではない。しかしながら原告が財産的損害において十分に過ぎる給付を受けていること自体は慰藉料の算定上ある程度減額事由として斟酌することはできるものと解すべきである。)、その他諸般の事情に鑑み、原告の本件事故に基づく精神的苦痛を慰藉すべき金額としては金五七万円をもつて相当と認める。(浜崎恭生)

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